ストロークでグリップを長く(短く)持つ際のメリット・デメリット

技術
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グリップを握るとき、「厚い(エクストリームウエスタン)・薄い(コンチネンタル)」を気にする人は少なくないが、「どれぐらいの長さで握って打つか」を気にする人は前者の厚い薄いと比べると少ない。

だがラケットをどの長さで握って打つかというのは意外とというかかなり重要であり、またプレースタイルや何を重視してプレーするかにも関係してくる。

今回はグリップを持つ長さの「短い」「長い」「ふつう」それぞれのメリット・デメリットについて考えてみる。

短く持ったときの特徴

説明に入る前に皆さんに野球のバッターを想像してほしい。

野球のバッターがバントをするとき、ヒットを狙っているとき、長打を狙っているときでバットを持つ長さが違うのを見たことがある人も少なくないだろう。

まずは実際の画像を見て欲しい。(上からバント、ヒット狙い、長打狙い)

バント狙い
ヒット狙い
長打狙い

野球を知っているテニス愛好家ならもうお分かりかもしれないが、グリップを短く持ったときのメリットデメリットというのは、野球のバットを短く持ったときと同じだ。

普通の長さ(小指がちょうどグリップエンドにくるぐらい)で持つのに比べて短く握る最大のメリットとしては、

面が安定する(ラケットが操作しやすくなる)

ラケットが操作しやすくなるということはボールをラケットの真ん中で捉えやすくなるということである。
テニスのショットの中で「ボールの勢いを出すことよりもボールをしっかりミートすることを優先したいショット」とはなんだろうか。

それはボレーである。

なぜかお分かりだろうか。

これは野球のバントの考え方と似ていて、通常相手がバントしてくることがわかっている場合ピッチャーは速いボールを投げる。

なぜか。
速いボールを投げたほうがきちんとミートするのが難しいからだ。(ということはテニスで相手がネット前に詰めてきたときも同様のことが当てはまる

速いボールを強く(遠く)へ打ち返したい、という意図があるのであれば別だが、バントのように確実に内野にゴロで転がしたいとか、ボレーのように確実に相手コートにコントロールして入れたいという意図の場合は短く持って打つのが適していて、実際にプロの中にもボレーする際に短く持って打っている選手は存在する。

錦織選手の元コーチ、マイケルチャンや現在女子日本代表監督の杉山愛氏なども現役時代は短く持ってボレーしていた。

一方デメリットとしては、

スイングの円運動が小さくなり、遠心力を効かせられず威力のあるボールが打ちにくい

ということが挙げられる。

長く持ったときの特徴

これも野球を例に取ると、ホームランバッターなどが長打を狙おうとしている場合、バットを長く持っている場合が多い。

この画像からは右手の小指がバットから外れるほど長く握っているのが分かる。
こんなに長く持つのは野球のバッターだけかというとそんなことはなく、テニスプレーヤーにもこれくらい長く持ってボールを打つプレーヤーはいる。

先ほどの野球選手ほどではないが、この画像の元世界ランキング1位のマルセロ・リオス氏も小指がグリップから外れそうなくらい長く持っている。

マルセロ・リオス

グリップを長く持つ、短く持つは選手の好みによるところが大きいのは事実(※)だが、選手の好みに関わらず長く持ったほうがいい、もしくは短く持ったほうが「都合がいい」ショットというのはある。

※選手の好みももちろんあるが、それと同じくらいその選手がプレーする上で「何を重視しているか」が判断に大きく影響している。

何を重視しているか、の何というのは、

サーブ、ストローク、ボレー等のどのショットを重視しているか
各ショットの威力と確率どちらを重視しているか

である。
これを言い換えるなら、

(大きな)スイングができるショットとできないショットどちらを重視しているか

さらに言い換えるなら、

(試合の中で)時間のあるシチュエーションを重視しているか、それとも時間がないシチュエーションを重視しているか

ということもできる。

前置きが長くなったがグリップを長く持ったときのメリットは、

遠心力を効かせて威力のあるボールを打ちやすい

で、デメリットとしては、

ラケットワークを正確に行ないにくい

言い換えると、ラケットを長く持ってプレーしている人は(その人のただの癖の場合は除くが)、テニスの技術の中でも比較的時間的余裕があるストロークやサーブ(の威力)に重きを置いてプレーしているということである。

ということは当然のことながら短く持ってプレーしている人というのは、時間的余裕があまりないボレーやリターンに重きを置いてプレーしているということである。

言い換えるなら、グリップを長く持って各ショットを打つタイプのプレーヤーは「確率より威力重視」とも言え、グリップを短く持つタイプのプレーヤーはその逆と言える。

ふつうに持ったときの特徴

これは簡単で、メリットは、

ショットの確率と威力のバランスが良い
打てないショットが(少)ない
打てないコースが(少)ない

で、デメリットは、

特徴がないボールしか打てない

ということである。

バーナード・トミック

このメリットデメリットはお分かりいただけるだろうか。

これは少し考えてもらえたら当たり前だと感じてもらえると思うのだが、特徴のない(ふつう)グリップ(の長さ)で握って打っているのだから、(良くも悪くも)特徴のないボールしか打てない。

高校にも普通科、機械科、商業科などがあるが、テニスのグリップもこれと同じで「ふつう」だと特徴は出ないのである。

だが一方でこれといった弱点がないというのはメリットでもある。
ただこの“ふつう”を長所と取るか短所と取るかは人によるだろう。

性格や生き方と同じで「ふつう」が良いと思う人もいれば、特徴がある生き方をしたいという人もいるのと同じである。

まとめ

ここまで触れてこなかったが「グリップを持つ長さ」と「回転の種類と量」と「打ちやすいコースと打ちにくいコース」は相関関係にあり、それも含めてまとめると、

【長く持つメリット】

・威力を出しやすい
・トップスピンが打ちやすい(回転量多くしやすい)
・クロスに打ちやすい

【長く持つデメリット】

・確率が落ちやすい
・スライスが打ちにくい
・ストレートが打ちにくい

【短く持つメリット】

・確率が良い
・スライスが打ちやすい
・ストレートに打ちやすい

【短く持つデメリット】

・威力が出しにくい
・トップスピンが打ちにくい
・クロスに打ちにくい

【ふつうに持つメリット】

・威力と確率のバランスが良い
・打ちにくい球種がない
・打ちにくいコースがない

【ふつうに持つデメリット】

・特徴のあるボールが打ちにくい
・特徴のあるショットが打ちにくい
・得意なコースがない(不得意なコースもない)

スタニスラス・ワウリンカ

このメリットデメリット以外に「したいこと別」に分けるとするなら、

「サーブやストロークの威力で相手を倒したい」
「シングルスで強くなりたい」

という人は長く持ち

「リターンダッシュなども絡めネットプレーで勝負したい」
「ダブルスで強くなりたい」

という人は短く持つと良いだろう。

それ以外の人はふつうの長さで持つといい。

このグリップを握るときの長さはジュニアや初心者はもちろん、経験者でも知らず知らずのうちに極端に長く持ったり短く持ったりしていることが少なくない。

自分(の目的)に合った長さのグリップで握れているか」というのは実はとても大事なのだが、意識して長さを“選択”している人はあまり多くはない。

グリップというのは手とラケットの唯一のジョイント部分

一度コートでチェックしてみて欲しい。

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